受賞等

日本原子力学会炉物理部会賞奨励賞を受賞

(2022-09-08)

炉物理・熱流動研究グループの近藤諒一氏が「エネルギーに関するスペクトル展開を用いた共鳴計算手法に関する研究」に係る研究業績により日本原子力学会炉物理部会奨励賞を受賞しました。

本研究は近藤氏が修士研究で実施したRSE法(Resonance calculation using energy Spectrum Expansion method)を用いた低コストで高精度な新しい共鳴計算手法の開発に関するものです。共鳴計算は炉物理分野において最も重要な計算の一つです。近藤氏が開発した手法は炉物理分野で長年に渡って研究されてきた共鳴計算の三大手法に代わり得る革新的な手法であり、今後の発展が期待できます。この取り組みが高く評価され、本奨励賞の受賞となりました。

今後はRSE法で得られた関数展開法に関する知見を、モンテカルロ中性子輸送計算に応用する研究に取り組むなど、炉物理分野における新手法の開発を進めていく予定です。

第54回日本原子力学会賞特賞・技術賞を受賞

(2022-03-18)

炉物理標準コード研究グループの多田健一研究副主幹と名古屋大学の山本章夫教授、北海道大学の千葉豪准教授が、「純国産次世代核データ処理システムFRENDYにおける中性子多群断面積作成機能の開発」により日本原子力学会賞 特賞・技術賞を受賞しました。

原子力機構では、2013年より核データ処理システムFRENDYの開発を進めており、2019年3月にFRENDY第1版を公開しました。その後、名古屋大学、北海道大学等と協力してFRENDYの多群断面積作成機能を開発しました。FRENDYの多群断面積作成機能の主な特徴は以下の通りです。

(1) 簡易な入力による処理を可能とする計算条件の自動設定

(2) 複数の核種からなる物質を考慮した実効断面積作成(核種間の共鳴干渉効果の正確な考慮)

(3) 自己遮蔽因子の計算に必要な背景断面積の自動設定機能

(4) 全ての中性子散乱/放出/吸収反応に対する自己遮蔽因子あるいは非等方性の正確な考慮

(5) 解析解を用いた正確なFree gasモデル熱中性子散乱断面積の計算

本機能の作成により、連続エネルギーモンテカルロコードだけでなく、多群輸送計算コードへの断面積ライブラリの提供が可能となりました。この取り組みが高く評価され、本技術賞の受賞となりました。

原子力機構では、多群断面積作成機能を組み込んだFRENDY第2版を、2022年1月に以下のURLで公開しました。 https://rpg.jaea.go.jp/main/ja/program_frendy/

日本原子力学会核データ部会学術賞を受賞

(2019-09-26)

炉物理標準コード研究グループ今野力研究主幹が、量子科学技術研究開発機構(QST)権セロム主任研究員、太田雅之主幹研究員と共同で、「NJOYコードで計算されたKERMA係数、DPA断面積の問題」に係る研究業績により日本原子力学会核データ部会学術賞を受賞しました。

KERMA係数、DPA断面積は、原子炉や核融合炉のような放射線環境下での核発熱、照射損傷を評価する上で基礎となる重要な物理量です。核データライブラリから断面積処理コードNJOYで導出したデータが世界中で使われています。今野研究主幹とQST権主任研究員、太田主幹研究員は、NJOYコードで計算されたKERMA係数、DPA断面積に様々な問題があることを詳細な調査により明らかにしました。この研究は世界的に見ても独創的かつ有益な研究として高く評価され、本学術賞の受賞となりました。

今後、明らかになった問題の解決を目指すとともに、原子力機構で開発している断面積処理コードFRENDYのKERMA係数、DPA断面積計算機能追加に反映させていく予定です。

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左からQST権氏、今野研究主幹、核データ部会長 渡辺氏

日本原子力学会より感謝状を拝受

(2019-09-26)

横山賢治研究主幹らのJNST掲載論文 "Cross-section adjustment methods based on minimum variance unbiased estimation"(J. Nucl. Sci. Technol, Vol.53, No.10, pp. 1622-1638 (2016))が、2018年のJNSTのインパクトファクター向上に貢献したとして感謝状を拝受しました。

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日本原子力学会炉物理部会貢献賞を受賞

(2017-04-17)

炉物理標準コード研究グループ多田健一研究員と核データ研究グループの国枝賢研究副主幹が、「核データ処理システムFRENDYの自国開発」により日本原子力学会炉物理部会貢献賞を受賞しました。

原子力機構では、原子力開発の根幹を支える技術である中性子と原子核の反応確率(断面積と言います)をデータベース化した評価済み核データライブラリ「JENDL」や粒子輸送シミュレーションプログラムを整備しており、これらは多くの研究機関等で広く利用されています。

粒子輸送シミュレーションプログラムは断面積データを用いて様々な計算を行いますが、評価済み核データライブラリを直接読み込むわけではなく、シミュレーションコード毎に決められたフォーマットに変換された断面積ライブラリを利用します。

我が国では、核データライブラリから断面積ライブラリに変換する処理に、従来、米国やIAEAで開発されたシステムを利用してきました。しかし、それらは開発時期が古いことや最新のJENDLの処理には対応していない問題がありました。核データ処理システムが古い問題は諸外国においても指摘されており、新しい核データ処理システムの開発は、我が国のみならず世界の原子炉物理の研究開発分野における最重要課題の一つとして強く認識されていました。

多田研究員と国枝研究副主幹はこれらの問題を解決すべく、核データ処理システムのデ・ファクトスタンダードと言える従来システムの処理機能の多くを包含した上で、その処理の問題点を発見・解決し、さらに高精度な処理を可能とするために、純国産核データ処理システムFRENDY(From Evaluated Nuclear Data librarY)の開発を推進しました。この取り組みが高く評価され、本貢献賞の受賞となりました。

FRENDYの第1版は連続エネルギーモンテカルロコード用ライブラリの作成機能を実装したシステムとして、原子力機構より今年度中に公開予定となっています。

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国枝賢、多田健一