高速炉用次世代炉物理解析システムMARBLEの開発

高速炉開発のための核特性詳細解析手法は、これまで主に臨界実験集合体で測定された積分実験データを解析コードで計算した結果と比較検証することで開発を進めてきました。これらの積分実験データ、解析コードを一体化して高速炉実機の設計解析に適用していくために、オブジェクト指向技術を使った高速炉用の新しい炉物理解析システムの開発を進めています。

1. 高速炉核特性詳細解析手法

高速炉の核特性詳細解析では予測精度を向上するためにベイズの定理に基づく炉定数調整法を用いており、図1に示すように単に核特性解析手法だけでなく核データの変動が核特性に及ぼす影響を表す感度係数の計算や炉定数調整を使った設計精度の評価・向上を含むものとなっています。

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図1 高速炉における核特性詳細解析の流れ

2. 次世代炉物理解析システムMARBLE

上述の高速炉核特性詳細解析手法のための解析システムとしてこれまでJOINT-FRとSAGEP-FRと呼ばれるコードシステムが整備されてきましたが、高速炉実機燃焼解析への適用性向上、実験解析データベースとの一体化、解析作業の効率化のために次世代炉物理解析システムMARBLEの開発を進めています。

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図2 MARBLEの基本構造

MARBLEでは拡張性や保守性の向上の観点から図2のような基本構造を採用しており、従来の解析コードの概念とは少し異なっています。MARBLE本体は解析に必要な部品の集合であり、解析コードを作るための土台(フレームワーク)となっています。このような概念を実現するためには、オブジェクト指向技術に基づき、アルゴリズムとデータを一体化させて部品化するとともに、それらの部品を再利用して新たな部品を構築する仕組みが必要である。このため、開発言語としては従来のFORTRANに加えて、オブジェクト指向言語のPythonやC++を導入しています。MARBLEでは図1に記載されている従来システムに含まれる解析コード(SLAROM、CITATION等)をカプセル化と呼ばれる方法で入力データの生成、実行、計算結果の抽出を自由に制御できるようにし、解析手法とデータを一体化した部品として整備しています。このため、これらの部品を使うことによって、これまでに検証された解析コードを再利用できるようになっています。

また、一部の解析コードはオブジェクト指向言語を使って再実装しています。これまでに新しく作成した燃焼計算ソルバー、設計精度評価ソルバーを含みます。新規開発のソルバーは、オブジェクト指向設計に基づく数値計算ライブラリを使用しているためアルゴリズム部分が簡潔になること、入出力データを構造化できること等により、従来コードに比べて簡潔に記述することができています。このため、新しい手法や機能を取り込むコストの低減が達成できています。この利点を生かして、より詳細な燃焼チェーンを適用するために燃焼計算ソルバーにクリロフ部分空間法を導入したり、核設計精度評価ソルバーに一般化バイアス因子法や拡張バイアス因子法等の最近の手法を導入したりしています。

3. 計算機能

前述のようにMARBLE本体は解析のための部品の集合でありユーザや開発者が部品を組み立てて使う必要があります。このままでは一般のユーザは使いにくいので、従来の解析システムに相当する部品を組み立てた後のモジュールも含んでいます。このようなモジュールが従来の解析システムに相当します。現在、MARBLE上で以下のような解析システムを開発しています。

  • 炉定数作成システムBIBLO
  • 高速炉臨界実験解析システムSCHEME
  • 高速炉実機燃焼解析システムORPHEUS

4. 参考文献

MARBLEに関する文献を以下に紹介します。

[1] K. Yokoyama, Y. Hirai, M. Tatsumi, H. Hyoudou, G. Chiba, T. Hazama, Y. Nagaya, M. Ishikawa, "MARBLE; A Nextgeneration neutronics analysis code system for fast reactors," Proc. Int. Conf. on the Physics of Reactors (PHYSOR2008) (CD-ROM), September 14-19, 2008, Interlaken, Switzerland (2008)

[2] K. Yokoyama, K. Numata, T. Hazama, M. Ishikawa, "Development of a neutronics design accuracy evaluation solver for next generation reactor physics analysis code system MARBLE," Proc. of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM), October 13-18, 2008, Aomori, Japan (2008)

[3] K. Yokoyama, "Development of common user data model for APOLLO3 and MARBLE and application to benchmark problems," JAEA-Research 2009-010 (July 2009)