原子炉の制御性能に有効な遅発中性子割合の精密評価

原子炉の制御性能を支配するパラメータである実効遅発中性子割合をモンテカルロ法により精度良く評価するための手法を開発しています。

核分裂反応で発生する中性子には、瞬時に発生する即発中性子と時間的な遅れを伴って発生する遅発中性子があり、遅発中性子は原子炉を制御するうえで重要な役割を果たします。原子炉内の全中性子に占める遅発中性子の割合を「実効遅発中性子割合」と呼びますが、その正確な予測が原子炉の制御の観点から重要となります。

原子炉内の中性子の振る舞いを精度良く計算する方法として、連続エネルギーモンテカルロ法が挙げられます。しかし、実効遅発中性子割合は連続エネルギーモンテカルロ法で厳密に計算するのは困難と考えられており、いくつかの近似的な方法が考案されてきました。

Nauchi&Kameyamaは、核分裂により発生する次の世代の中性子のみを考慮するという近似を導入することで、連続エネルギーモンテカルロ法による実効遅発中性子割合の計算を可能とする画期的な方法を考案しました。ただし、この近似の精度について定量的な評価は全く行われていませんでした。

我々の研究グループでは、理論的な考察を進め、この「世代の効果」を評価することに成功しました。

図1に、Godivaと呼ばれる原子炉における実効遅発中性子割合に対する「世代の効果」の影響を示します。これより、実効遅発中性子割合の計算においては、1世代の影響のみを考慮することは不十分であることを明らかにしました。

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図1 Godiva炉における実効遅発中性子割合に対する「世代の効果」の影響[1]

また、Bretcherは「k-ratio法」という方法を考案しました。この方法は、遅発中性子が存在しない仮想的な系を考え、遅発中性子が存在する系との実効増倍率の差から実効遅発中性子割合を計算するというものです。ただし、この方法でも厳密に実効遅発中性子割合を計算できるという保証はありません。また、連続エネルギーモンテカルロ法特有の統計的な不確かさを低減するため、多大な計算負荷を要するという問題もありました。

そこで我々の研究グループでは「修正k-ratio法」を提案しました。この方法による実効遅発中性子割合の計算結果を図2に示します。この方法では調整因子というパラメータを導入しますが、この調整因子を適切に設定することで、厳密解の再現・少ない計算時間の評価が可能であることが分かります。

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図2 修正k-ratio法による実効遅発中性子割合の評価結果[2]

また、微分演算子サンプリング法、相関サンプリング法による実効遅発中性子割合の計算手法の開発も進めており、実用的な手法の提案を予定しています[3]。

参考文献

[1] Dwi Irwanto, Go Chiba, Yasunobu Nagaya, et al., “Study on calculation methods for effective delayed neutron fraction,” Proc. of 2009 annual meeting of AESJ (2009).

[2] G. Chiba, “Calculation of effective delayed neutron fraction with a modified k-ratio method,” J. Nucl. Sci. Technol., 46, No.5, pp.399-402 (2009).

[3] Y. Nagaya, et al.,”Approximate estimation of effective delayed neutron fraction with correlated sampling method,” Proc. of Int. Conf. on the Physics of Reactors, Interlaken, Switzerland (2008).