燃焼度クレジットガイド資料の公刊
日本原子力研究所
燃料サイクル安全工学部
野村 靖,奥野 浩,須山賢也
日本原子力研究所では昨年度「燃焼度クレジット導入ガイド原案」(JAERI-Tech 2001-055)を作成しました。
軽水炉燃料では,一般に燃焼が進むと反応度が低下することは良く知られています。この反応度低下を臨界安全管理において考慮することを,燃焼度クレジットを採ると呼んでいます。日本では,従来,使用済燃料の輸送及び貯蔵において新燃料の仮定の基に設計及び運転管理が行われてきました。燃焼度クレジットを採用すると,例えば輸送に関しては一度に運べる燃料を増やせることになり,経済性だけでなく,一般公衆及び従事者の被ばく低減化にもつながることで安全性向上が期待できます。
本ガイド原案は,燃焼度クレジットの採用のために必要となるデータの整備や計算手法の開発による成果をまとめ,さらに一般に用いられている手法等の解説も加えて,燃焼度クレジットの導入を志している人々の参照に便利なようにハンドブック形式でまとめてあります。
原案の構成に従って,概要を説明すると以下のようになります。
第1章の序論において,本ガイド原案作成の背景,及び1999年に公刊された「臨界安全ハンドブック第2版」(JAERI
1340)の追補という位置付けで発行されることを述べ,第2章には燃焼度クレジットを採用した臨界安全管理の基本的考え方,用語の定義や臨界安全評価の手順などを記しています。第3章では核種組成評価に用いられる一般的手法,燃焼計算コードとライブラリーの種類,燃焼計算コードの検証,さらに,核種組成簡易評価法として,誤差等の影響を臨界安全解析上保守的な結果が得られるような燃焼度減少分に換算した等価均一燃焼度法や,燃焼による反応度低下を初期濃縮度の上昇分に焼直した等価初期濃縮度法についても触れています。第4章では臨界評価法として用いられる一般的手法,また臨界計算コードの概要紹介や検証に使用できるデータについて,核種組成解析コードとの関連に留意しながら記述しています。第5章は,実際の輸送及び貯蔵設備での使用済燃料取り扱いにおける,燃焼度クレジット運用方法について記しています。
本ガイド原案では,現状,利用できるデータの制限により,主としてPWR燃焼燃料の体系について,またU及びPUなどアクチニド同位体核種のみを考慮した簡易評価手法等についての記述に留めており,BWR燃焼燃料の体系,あるいは核分裂性生成物(FP)の中性子吸収効果についての詳細な検討は,今後の課題としています。
最後に本ガイド原案は,臨界安全性専門部会(主査:仁科浩二郎 淑徳大学教授)の下に設置された臨界安全性実験データ検討ワーキンググループ(主査:山根義宏 名大教授)による検討を受けたものであることを付加えておきます。
Copyright (c) 日本原子力学会炉物理部会 / Reactor Physics Divisio, Atomic Energy Society of Japan