原子炉物理学分野の人材育成と
モチベーション向上策検討のためのアンケート
炉物理部会学術交流小委員会担当幹事
多田健一、羽倉尚人
1. 本アンケート実施の背景
東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、学生や若手のモチベーションや技術力の維持・向上が大学や産業界において大きな課題の一つとなっている。今後の福島第一原子力発電所の廃炉作業を着実に遂行する上でも、また今後の原子力技術を維持・発展させる上でも、学生や若手のモチベーションを高め、技術力を向上させていくことは、非常に重要な課題である。しかしながら、現在の原子力業界を取り巻く厳しい状況下では学生や若手の育成に大規模な投資を行うことは困難である。
そこで限られた予算を有効活用するために、学生や若手のニーズを的確に把握する必要があると考え、学生や若手の意識や考えを調査する目的で、本アンケートを実施した。
なお、本アンケートは2014年9月の日本原子力学会秋の大会において、『炉物理分野の人材の現状と今後の課題』というタイトルで実施した炉物理部会の企画セッションの一部である。本企画セッションでは、現在の厳しい状況下で炉物理および原子力の今後を支える人材をどのように育成していくべきかという議論の一助として、本アンケート結果などを基に現状を部会員で共有し、人材育成における様々な課題を克服するための方策について議論した。
2. 本アンケートの概要
本アンケートの目的は
1. 高校生や大学生が原子力の分野に進学・就職してもらうためには何が重要か?
(どのような情報の提供や活動をすれば効果的か?)
2. 原子力の分野に進んだ学生や若手をどう育成していけばいいか?
3. 学生や若手のモチベーションを向上させるためには何が重要か?
という三つの課題を解決するための検討材料の一つとすることである。
また、一口に原子力といっても電力会社やメーカーなど様々な業種があり、また世代によっても考えやニーズが異なることが想定されることから、業種や年齢別でアンケート結果を分類する必要がある。しかし、業種や年齢を細かく分類しすぎると、個人を特定できかねないという問題が生じる。そこで本人が特定できないように業種は電力会社やプラント・燃料メーカーといった大まかな業種に、年齢は5歳刻みで分類し、それぞれの年齢・業種別で学生や若手の考えやニーズの違いについて調査した。
アンケートの内容は、原子力についての一般的な質問や、炉物理の講義や興味に関する質問、就職や進路選択時に参考とした情報、東日本大震災前後での考え方の変化など、幅広い内容になっており、様々な視点で学生や若手の考えやニーズを把握できるようにした。
3. 本アンケートの回答者概要
炉物理部会員及び炉物理系の研究室のOB・OGに本アンケートの回答を依頼し、106名から回答を得た。
回答者は35歳未満の若手が6割と多く、学生や若手研究者・技術者の意識や考えがよく分かる結果となっている。また職業については一部の業種に偏ることなく、多くの職種から回答を得られた。
4. アンケート結果(抜粋)
炉物理分野の人材の現状と 学生・若手研究者・技術者へのアンケート集計結果報告
※本資料は日本原子力学会2014年秋の大会の炉物理部会企画セッションにて発表されたものに一部修正を加えたものである。
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